診療科部長からのご挨拶
南大阪病院放射線科では、2011年の新病院に移設以来、CT、MRI、血管造影などの撮像装置やその画像処理装置については、機種更新やアップグレードを繰り返し行い、できる限り最新のものを患者さんや依頼医師に提供できるようしてまいりました。
昨今CT、MRIなどの画像診断装置の急速な進歩により、得られる情報量が加速度的に増え、これを解析して疾患の情報を各診療科に伝える放射線専門医はきわめて重要な役割を担うようになっています。
放射線専門医は院内の画像診断の大部分を担当し、検査当日に迅速に読影診断レポートを作成しています。検査後の画像や読影診断レポートは病院情報システムに公開しており、リアルタイムに院内のどの端末でも参照可能です。
また当院は病診連携を重視しており、院外から紹介していただく患者さんには、スムーズに検査を受けていただく仕組みを構築し、スタッフは患者さんが不安を感じずに検査を受けていただけるよう心がけています。
紹介していただいた患者さんの検査報告書は、画像とともにできる限り早く紹介してくださった医療機関にお返ししています。
放射線専門医は撮影した画像を診断するだけでなく『被ばく防止・安全管理をする』という役割も担っており、いわゆるレントゲン検査やCT検査を行っている背景では、適切な検査方法を検討し、被ばく管理も行っていますので、どうぞ安心して必要な検査をお受けください。
診療科の特色・活動内容
放射線科医師、診療放射線技師、看護師、受付を含め当科診療に関わるスタッフが一丸となって、診療にあたっています。
- 当院では、常勤診断医2名と非常勤医師3名の放射線診断専門医が診療に従事し、安全かつ円滑に検査を実施し、適確な画像診断を行うことを第一にしています。
- 診療放射線技師が、患者さんの姿位・状態に応じて最適な条件で撮影をした画像を、読影・診断・レポート作成を行い、他科の医師に診断結果を報告しています。
- 画像診断レポートの質の向上のため、各科とのカンファレンスや放射線科内での検討会、放射線学会をはじめとする最新の医学研究に積極的に参加し貢献することを心がけています。
検査機器紹介
X線CT(マルチスライス・ヘリカル対応)
2022年9月に64列CTから80列CT(Aquilion Prime SP)に更新しました。新装置は従来装置に比べ、より高速な撮影が可能なため、胸部のみであれば約3秒、胸腹骨盤部であれば約5秒で撮影ができます。そのため、息止めの難しい患者様の場合でも動きの少ない画像が得られます。また、以前の装置に比べて、画像の再構成処理(様々な断面像の作成)が早くなり、医師が画像を確認するための待ち時間が短くなりました。
さらに80列の検出器とDouble Slice technologyにより、1回転で160スライスの情報が得られます。1スライスは高精細の0.5mmで撮影でき、得られた画像で3D再構成が可能です。従来装置になかった新たな機能として、最新の技術であるAI(人工知能)によって、画像のノイズ低減が可能です(AiCE)。さらにノイズだけでなく被ばく低減もできる機能(AIDR)や金属による画像のゆがみなどを抑える機能(SEMAR)も備わっています。
また、今回はCT装置とともに3D再構成処理ワークステーションもziostation2に更新しました。骨や血管など組織の認識能力が高いため、あらゆる角度から観察できる3D画像の提供がスピーディーに行えるようになりました。
これらの機能を使用して、よりきれいな画像を早く提供し、患者様の診療に貢献していきたいと思います。
AIDR 3D:逐次近似応用再構成
収集された投影データ上で、統計学的ノイズモデル、スキャナーモデルを用いてノイズを低減します。
さらに、アナトミカルモデルを用い、画像再構成の中でノイズ成分のみを抽出して繰り返し除去します。これにより、最大50%のノイズ低減と、75%の被ばく低減効果を発揮します。
金属アーチファクト低減処理 SEMAR
CT検査は人体組織のX線透過のわずかな差を画像にしていますが、人工骨頭などの金属はアーチファクトと呼ばれるノイズが発生して画像が乱れる原因になります。
SEMARにより、アーチファクトを軽減することができます。
3テスラーMRI(CANON社製 Vantage Galan3T)
AI(人工知能)を用いてノイズ除去再構成技術を搭載した3テスラMRI装置で、一般的に高磁場装置のほうが画像の信号が強く高分解能画像を撮像することが可能です。
MRIはAI時代へ
Aice(ノイズ除去再構成技術)搭載
人工知能と深層学習(DLR)
次世代の高分解能画像の実現を目的にAIと再構成を融合させたDeep Learning Reconstruction(DLR)を利用しSNR(信号ノイズ比)を飛躍的に向上させる再構成技術です。 世界で初めてMRI装置に実装されました。
当院MRI室は、患者さんへの優しさを第一に考えて、 より早く、確実、快適な検査を目指しています。
血管撮影装置 INFX-8000V
X線受光面のFPD(平面検出器)とPureBrainによって鮮鋭度が従来に比べ格段に優れており、カテーテル寝台を動かさなくても全身を観察範囲とできるので心カテの後、下肢動脈まで患者様の体を 動かさなくても連続して撮影できます。
また、画像保存用高速磁気ディスクはトラブル時でも運転 を中断することなくデータの復元が出来ますから安心です。 今まで以上に安心して検査がうけていただけます。
デジタルX線透視診断装置 Astorex i9
令和4年1月に、Astorexi9(アストレックス アイ9)というX線透視診断装置を導入し稼働しています。
以前の装置より、大きいモニターを搭載しており、検査中の透視や画像を見やすくなっています。さらに、外科や整形外科などの様々な検査を高画質・低被ばくで行うことができます。
今回当院では、トモシンセシス撮影・長尺撮影・DSAを搭載しています。
本装置を導入し、以前に増してより良い検査を提供できるようになりました。
検査に対して不安やご不明な点がありましたら、診療放射線技師にお声がけください。
トモシンセシス撮影
奥行きを知るために撮影します。撮影角度を変えて撮影し、得られた投影画像に対して画像処理することで、そのボリュームデータから奥行方向にスライス情報を持ったデジタル断層撮影が可能です。これにより、CT室に移動することなく透視検査中に断層情報を得られます。
長尺撮影
下肢や脊椎といった範囲の広い撮影のことです。この装置では、台に患者様が立っているだけで、X線管とFPDが移動し、収集画像を自動で貼り合わせて1枚の画像として再構成します。これにより、高画質な画像が短時間で得ることができます。
DSA
血管造影画像と非造影画像をサブトラクション(引き算)処理することで、血管以外の組織を消去し、血管像だけを抽出する撮影法です。この機能は、濃度分解能が向上するので、造影剤を少量でも画像上で検出することが可能になります。
フラットパネルディテクタ(FPD)搭載型マンモグラフィ
当院ではフラットパネルディテクタ(FPD)搭載型のマンモグラフィ装置を使用しています。 この装置は、高い病変の描出力を持ち「しこり」として触れない早期の乳がんの発見にも大変優れています。
通常のマンモグラフィ撮影の他に、デジタルブレストトモシンセシス、ステレオタクティックマンモトーム生検も行っています。
・デジタルブレストトモシンセシス
通常のマンモグラフィ検査と同じ様に乳房を圧迫します。通常であればそのまま乳房に、垂直に撮影するのですが、デジタルブレストトモシンセシスでは、異なる9つの角度で撮影し、最後に画像を再構成することで平面だけではなく、奥行きの情報もある画像を得ます。奥行きの情報が入るため、これまでマンモグラフィでの診断が難しかった乳線の多い乳房にも有効です。
・ステレオタクティックマンモトーム生検
生検とは、ある病変を疑うものの組織を採取し、病理組織診断を行うことです。 ステレオタクティックマンモトーム生検では、その他の検査で良性か悪性かを判断できない石灰化病変をマンモグラフィ撮影を用いながら穿刺して、組織を採取する検査です。
・CAD(コンピューター検出支援装置)
ネットワーク経由でデジタルマンモグラフィのデータを受信し、マンモグラフィ上の関心領域を自動的に検出する診断支援装置です。 マンモグラフィ上にある石灰化や腫瘤などに反応し、その領域に自動的にマークを表示します。
スタッフ一覧
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中島 秀行
主な資格
- 日本医学放射線学会診断専門医
-
境 一光
主な資格
- 日本医学放射線学会診断専門医