部長からのご挨拶
診療支援部部長 兼 リハビリテーション科科長 山川智之
診療支援部とはコメディカル部門の総称であります.部内には放射線科・栄養科・臨床検査科・リハビリテーション科・視能訓練士の専門分野の各科・各員の管理を行う部門である.各部署の専門性をいかして,診療の下支えを行い患者様および地域社会への貢献を目指しております.
リハビリテーション科は,「本格的な質の高いリハビリテーション」を提供することを責務と考えております.質の高いリハビリテーションとは,技術の高さだけをいうのではなく病気や障がいなどにより起こる患者様の不利益をできるだけなくした形で生活や社会に戻るために必要なものと考えております.その実現のために大切なことは,患者様の科学的な評価を行い,適正な訓練プログラムのもと訓練を実施して退院後の家庭復帰や職場復帰を目指しております.今後も皆様のお役に立つリハビリテーションの提供をして参ります.
業務内容
リハビリテーション科には,理学療法士(Physical therapist),作業療法士(Occupational therapist),言語聴覚士(Speech-language-hearing therapist)の3部門がありリハビリテーション専門職と言われております.それぞれの専門性を活かして、入院患者さまの日常生活動作(ADL)や生活の質(QOL)などを高めるよう取り組んでいます.ここで,当科での治療や訓練をご紹介します.
理学療法とは
病気や怪我などによって障がいが現れたり,身体機能が低下した状態にある方々に身体的な機能の維持・回復を目的にして,運動療法および温熱療法,電気療法,水治療などの物理的手段を用いるリハビリテーション治療です.
作業療法とは
人間は,暮らしの中で食事・トイレ・着替え・お風呂などの日常生活動作(ADL)や料理・洗濯・掃除などの生活関連動作,そしてスポーツ・音楽鑑賞・手芸などの趣味的活動など様々な営みをしています.これらを『作業活動 』と総称して作業療法では、各々の患者様の状態を見極め、その人が人間らしく生きていくために何が必要か,そのためにはどんな能力が必要なのかを考え,適合する作業活動を用いて治療・援助を行います.具体的には身体機能訓練,日常生活動作訓練,職業的動作訓練,自助具や福祉機器の適応,住宅改修のアドバイスなどを行います.
言語聴覚療法とは
食べることや話すことなどの障がいに対して行う治療法のことです.さまざまな疾患の理由で飲み込みがしにくい方の「摂食・嚥下障害」へのアプローチ行うとともに,脳血管障がい,頭部外傷や神経疾患などによって生じた「構音障がい」「失語症」などのリハビリテーションを行います.
特色及び取り組み
① 整形外科疾患(運動器の障害)
手足や脊椎の骨折、腰痛、頸部痛、肩関節周囲炎、退行変性疾患,腰椎椎間板ヘルニア,靭帯損傷,変形性関節症,四肢の切断など
整形外科病棟に入院後、大腿骨骨折、膝・足の変形により手術または保存療法をされた患者様、腰痛や下肢のしびれにより歩くのが困難になり手術または保存療法された患者様に日常生活が送れるよう筋力をつけたり、関節の動きをよくしたりする運動療法を行います。
② 呼吸器疾患
慢性閉塞性肺疾患、肺炎、結核後遺症、喘息など
肺炎や慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支ぜんそくの患者様に楽な呼吸の指導や痰の出し方、動作時の息切れの軽減、呼吸にかかわる筋肉の増強やストレッチを行います。
③ 心臓疾患
心筋梗塞、狭心症など
11階には心臓リハビリテーション室を併設しており,急性・陳旧性心筋梗塞,狭心症,ペースメーカ植え込み術後,心不全や閉塞性動脈硬化症などの患者様への理学療法を行っています.心臓の血管に病気がある場合に、自転車をこぐエルゴメータや歩行訓練するトレッドミルなどを使い,心臓に無理のないような動作の練習や筋力アップを図ります.更に当院では循環器内科の医師の指示のもと,心臓の状態を確認することやどれだけ日常生活で動けるのか,心肺運動負荷試験も行っています.
④ 内科的疾患(廃用症候群)
術後体力低下、糖尿病の運動指導、近い将来運動機能の低下により要介助状態になることが予想される高齢の方など
日常生活で行われている寝返り,起き上がり,立ち上がり,歩行,階段の上り下りを練習します.歩行を行う上で杖やシルバーカーの使い方といった歩行補助具の使用においても練習を行っています.
⑤ 中枢神経疾患
脳血管疾患,脳の外傷,脊髄損傷,中枢神経の変性疾患,腫瘍など
脳梗塞・脳出血等の脳血管疾患の患者様に身体の状態に合わせて,起きたり,座ったり,歩行の訓練を行います.また,廃用症候群に対して必要に応じた運動を行います.
日常生活動作のリハビリテーション
① 入浴
家庭環境に合わせて手すりの位置や浴槽の高さを想定して入浴訓練を行います.
入浴が難しい患者様には,福祉機器などの導入を提案する場合もあります.
② 着替え
服の着替えを練習しています.一般的には,動かしにくい腕の方から袖を通した方が着やすいのですが,その人に合わせたより着やすい方法を患者様と一緒に考えて練習しています.
③ 作業活動(アクティビティー)を用いたリハビリテーション
脳卒中や頸椎症により手を動かしにくくなる(巧緻機能障がい)を呈した方に,手を少しでも本人の意思と共に動かせるように練習をしています.作業療法士は腕の重さを介助しながら指の正常な運動が行えるように援助しています.
④ 輪投げ
脳卒中により座った姿勢を保った上で麻痺側に体重を乗せる際に輪投げを用いて,麻痺側に体重の移動がスムーズに行えるよう練習をしています.作業療法士が,輪投げの位置を調整しながら上手く体重の移動ができるように援助しています.
言語聴覚療法のリハビリテーション
① 摂食・嚥下障がいのリハビリテーション
嚥下障がいのある方に評価や訓練を行います.また主治医と耳鼻科医と連携をして嚥下内視鏡検査(VE)による嚥下機能の精査を行い,嚥下の状態に合わせた食事形態の選択や食事方法などを検討します.在宅や施設などに戻られる際に,ご家族や職員の方に食事形態や介助方法などをご指導しています.適切な評価に基づき,安全な食事形態や食事方法を検討しています.より安全により楽しく食していただけるよう努力しています.
② 構音障がい,失語症のリハビリテーション
防音設備のある言語聴覚室を2部屋備え、構音障がいや失語症に対するリハビリテーションを行います.構音障がいのリハビリテーションでは,口唇,舌の運動,呼吸,発声練習や構音訓練などを行い機能の回復を目指すとともに,残存機能を最大限に活用して機能維持を図ります.失語症のリハビリテーションは,コミュニケーション能力の回復を目的とした言語訓練を行い,ご家族とのコミュニケーション方法へのアドバイスや代償手段の検討などを行っています.これにはさまざまな検査を用いりますが,高次脳機能検査もそのひとつです.
施設基準
- 心大血管等リハビリテーション料Ⅰ
- 脳血管疾患等リハビリテーション料Ⅰ
- 廃用症候群リハビリテーション料Ⅰ
- 運動器リハビリテーション料Ⅰ
- 呼吸器リハビリテーションⅠ
- がん患者リハビリテーション料