サイト内検索

食道裂孔ヘルニア・逆流性食道炎に対する手術が4年連続日本最多になりました

外科コラム

食道裂孔ヘルニアは横隔膜を食道が貫通している穴である食道裂孔を介して、胃が胸の方へずれ込む特殊な病気です。お腹の筋肉が弱くなる、背中が曲がってくる、肥満などで生じると考えられていますが、明らかな原因はまだ分かっていません。この食道裂孔ヘルニアは、非常に頻度の高い病気であり、内視鏡検査をすると日本人の約半数の方に診断されると言われており、特にご高齢の方に頻度が高いことが知られています。食道裂孔ヘルニアがあっても無症状の方も多いですが、症状がある場合には逆流性食道炎症状が最も多く、胃酸を抑制する薬で多くの方は症状が改善します。しかし、食道裂孔ヘルニアが悪化すると嘔吐・胸部不快・呼吸困難など様々な症状が生じることが知られています。食道裂孔ヘルニアは胃の形態が変わってしまう病気であり、薬ではその状態を改善できません。このため、食道裂孔ヘルニアによって生じている様々な症状が、薬で改善しない場合には外科的治療が適応になります。

食道裂孔ヘルニアは非常に頻度の高い病気である一方で、日本において食道裂孔ヘルニアに対する外科的治療の件数は非常に少数で年間1100件程度です(胃癌では35000件以上/年)。

この原因は、日本では薬は非常に安価でかつ長期に使用しやすい環境にあること、大学病院やセンター病院では癌の手術を優先する施設であり食道裂孔ヘルニアなどの良性疾患には対応していないこと、食道裂孔ヘルニアを手術で改善するという知識の普及不足など様々で、現在でも海外に比べて手術件数は非常に少数にとどまっています。しかし、当院では2017年以降食道裂孔ヘルニアに対する外科的治療を積極的に行なっており、全国の病院の集計で2019年度から2022年度の4年連続で日本最多の手術件数になりました。

これに伴い食道裂孔ヘルニア・逆流性食道炎で手術を希望され当院外科を受診される患者さんが増加しています。今後とも食道裂孔ヘルニア・逆流性食道炎でお悩みの方に生活の質を改善できる外科的治療として安全性を重視しつつ行なっていきます。