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胆石症について解説します

外科コラム

外科統括部長 副院長の竹村と申します。

今回は我々外科医が手術の対象とする病気の一つで、非常に頻度の高い病気である胆石症について解説します。
胆石症とは、肝臓で産生された胆汁という消化液を、肝臓から消化管に誘導する道である胆道(肝内胆管・胆嚢・総胆管など)に結石ができる状態を表しています(図1)。最も多いのは胆嚢内に結石ができる胆嚢結石症(単に胆石と呼ばれることも多い)です。ついで、総胆管結石が多く、肝内結石は非常にまれです。このうち、症状が出やすく治療の対象となることが多いのは、胆嚢結石と総胆管結石です。胆石症の症状はほぼ共通しており、上腹部痛・背部痛や発熱などです。

総胆管結石は、総胆管内に結石が形成される場合と、胆嚢内にできた結石が総胆管内に落下して生じる場合があります。総胆管結石に対する治療は、以前には外科的治療が主な治療法でしたが、現在では内視鏡(いわゆる胃カメラ)を用いる治療が主流になっています。しかし、現在でも以前に胃の手術を受けられた既往がある場合など、内視鏡で治療が困難な場合には外科的治療が適応になることがあります。内視鏡により総胆管内の結石を除去し治療が終了になることもありますが、胆嚢内に結石がある場合にはまた同様の状態になる可能性があるため、胆嚢摘出術が行われることが多くあります。この胆嚢摘出術は、開腹下または腹腔鏡下に行われますが、現在では腹腔鏡下胆嚢摘出術が標準的な術式となっており、当院でも腹腔鏡下に胆嚢摘出術を行なっています。

一方、胆嚢のみに結石がある胆嚢結石症は非常に頻度が高く、お腹の検査をする時にたまたま見つかる方が沢山おられます。しかし、多くの方では胆嚢内に結石があっても症状がなく、無症状のまま経過します。一方、胆嚢結石がある方で、食後に上腹部痛をくりかす方や、慢性的な痛みがある方、さらに急激な胆嚢の炎症による腹痛を生じる急性胆嚢炎になった方では外科的治療が適応されます。その際にも通常は腹腔鏡下胆嚢摘出術と呼ばれる傷の小さい手術が選択されます。

当院でも胆嚢摘出術の際には腹腔鏡下手術を標準術式としていますが、炎症の少なく手術難易度が低いと考えられる場合には、単孔式腹腔鏡下胆嚢摘出術(おへそに開けた一つの穴から行う腹腔鏡手術)で行っています。胆嚢摘出術は、炎症が無い状態では手術時間も短く、合併症も少ない手術ですが、炎症が高度の急性胆嚢炎になると手術時間が長くなり、手術後の合併症も多くなる可能性があります。このため、当院では症状のある胆嚢胆石症を持つ方には、炎症のない時期に外科的治療をお勧めしておりますが、手術までの期間に急性の炎症を生じ緊急手術になる可能性があります。

その一方で、外科的治療は全身麻酔で行われるため胃や大腸などの消化管手術に比べれば小さいものの身体への負担が生じ、頻度は低いですが手術に伴う合併症が無いわけではありません。手術に伴うリスクが高く全身麻酔により合併症が発症しやすいと考えられる方には、そのまま経過を見ることもあります。

胆石症に対する治療法

■管内胆石
 ●胆石の中では非常に少ない。
 ●多くは無症状であるが痛みなどの症状がある場合には内視鏡を用いた治療や外科的治療が適応される。

■胆嚢胆石
 ●胆石の中でも最も多い
 ●症状のないことも多いが、食後の右上腹部の痛み・違和感などの症状が起こることもある。
 ●症状がある場合や急性胆嚢炎を発症した場合には外科的治療の適応になる。

■総胆管結石
 ●無症状の方も多いが、胆管の閉塞を来した場合には急激な腹痛や肝機能障害・黄疸を生じる。
 ●内視鏡的な治療が行われるが、難しい場合には外科的治療の適応となる。

胆石があり治療を考えておられる方や、痛みなどの症状がある方は当院外科を受診いただければ治療法の説明をさせていただきますのでぜひ受診ください。