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当院における内視鏡外科(腹腔鏡下)手術について

外科コラム

内視鏡外科部長の竹村と申します。
当科で行っている内視鏡外科(腹腔鏡下)手術について紹介させていただきます。

我々が外科医になった1990年代は、日本では外科手術といえば開腹手術が当たり前で、大きく切って手術をする外科医が偉大な外科医だとする風潮があった時代でした。開腹手術は患者さんが目にする傷が非常に大きく、痛みを伴う手術でしたが、当時は選択の余地はありませんでした。

その一方で、外科手術術式や手術器具の発達が非常に早くなり、海外では1985年頃より腹腔鏡下手術(内視鏡外科手術)が登場しました。腹腔鏡下手術は、お腹に数カ所の1cm程度の穴をあけてお腹の中にガスを入れて空間を作り数本の手術器具と腹腔鏡を挿入し、術者はモニター画面をみて行う手術を指します。このため、外科医は患者さんの方向ではなく、モニター画面を見て手術を行います。日本には1990年に導入され、当初は良性疾患である胆石症に導入されましたが、今までの手術に比べて傷が小さく術後の回復も早いということで瞬く間に症例数が増加しました。

腹腔鏡下手術の開始当初はまだまだ腹腔鏡や器具の性能が悪く、手術時間が非常に長くかかる手術でした。しかし、急速に手術器具が発達し、これまで無かったような腹腔鏡下手術に特化した手術器具が開発され、なにより手術手技の定型化により治療成績は安定し、現在では開腹手術に取って代わった術式もあります。1995年以降は癌の手術にも腹腔鏡手術が導入されるようになりました。まず、大腸癌に対して腹腔鏡下大腸切除術が導入され、次いで食道癌・胃癌にも導入が進み、現在ではほとんどの消化器外科手術に腹腔鏡下手術が導入されています。さらに、腹腔鏡下手術の安全性維持のために、日本内視鏡外科学会が主導して腹腔鏡下手術のビデオ評価を行い認定する、技術認定制度という日本独特の制度も確立されました。

現在、日本では高齢化人口の急激な増加に伴い、大腸癌の患者さんが増加しており、高齢者に対して優しい手術として、腹腔鏡下手術の重要性がますます高まってきております。当院でも多くの消化器外科手術に腹腔鏡下手術を導入しており、胃癌・直腸癌を含む大腸癌・胆石症・鼠径ヘルニアを主な対象疾患としています。2名の技術認定医を含む外科医が腹腔鏡下手術に携わっております。今後は、私の専門領域である、胃癌に対する腹腔鏡下手術に対する適応をさらに広め、食道癌のみならず現在急速に患者さんの数が増加している食道裂孔ヘルニア・逆流性食道炎などの食道良性疾患に対する腹腔鏡下手術も行っていく予定です。

腹腔鏡下手術は患者さんに非常にメリットがある手術ですが、治療成績の確立しているのは開腹手術であることは間違いありません。このため、腹腔鏡下手術を行う際には常に安全に施行するということを重視しつつ、質の高い腹腔鏡下手術を提供できるように取り組んでまいりたいと思います。腹腔鏡下手術のことをもっと知りたいと思われる方は、下記サイトを訪ねてみてください。

http://www.e-oishasan.net/site/takemura/