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当院で新しく導入した腹腔鏡内視鏡合同手術について

外科コラム

内視鏡外科部長の竹村と申します。
当院で新しく導入した腹腔鏡内視鏡合同手術についてご紹介します。

当院では2017年4月より、胃粘膜下腫瘍に対し消化器内科と連携し腹腔鏡内視鏡合同手術(Laparoscopy Endoscopy Cooperative Surgery:LECS)を実施しています。本稿ではこの新しい手術であるLECSの適応や特徴について解説します。

 胃に発生する腫瘍のひとつに胃粘膜下腫瘍と呼ばれる特殊な腫瘍があります。胃がんとは異なる腫瘍ですが、多彩な種類の腫瘍を含み、悪性のものから良性のものまで様々です。胃粘膜下腫瘍があっても症状の無い方が多く、内視鏡検査の際にたまたま見つかる方が多い腫瘍です。小さなものでは定期的な内視鏡検査により経過をみることがありますが、2㎝以上になると外科的治療の適応となります。(表1)

胃粘膜下腫瘍腫瘍の種類 (表1)

・ 腫瘍性病変
 ― 非上皮性腫瘍
  ・ 間葉系腫瘍(神経鞘腫・GIST・平滑筋腫など)
  ・ 血管原生腫瘍(血管腫・血管肉腫など)
  ・ 脂肪腫・脂肪肉腫
  ・ 悪性黒色腫
 ― 上皮性腫瘍
  ・ カルチノイド
  ・ 粘膜下腫瘍様の形態を示す腫瘍など

・ 非腫瘍性病変
 ― 迷入膵・炎症性線維性ポリープ・嚢腫など

 胃がんに対する外科的治療は胃の切除と周囲のリンパ節の摘出が必要ですが、胃粘膜下腫瘍に対してリンパ節は摘出せず、腫瘍と周囲の健常組織を含めて切除するという術式が行われます。このため、小さな胃粘膜下腫瘍に対しては腹腔鏡手術が良い適応となります。しかし、腹腔鏡手術は消化管管腔外(いわゆる胃の外側)へ発育する腫瘍の確認は容易ですが、管腔内(胃の内側)に発育する腫瘍の正確な確認は困難であるという欠点があります。

 さらに、胃粘膜下腫瘍の存在部位によっては胃壁を大きく切除する必要があったり、胃を切除することで胃の変形を来たし、胃の機能障害を惹起することがありました。そうした過剰な胃壁の切除を回避するために考案された手術方法が腹腔鏡内視鏡合同手術(Laparoscopy Endoscopy Cooperative Surgery:LECS)で、消化器内科医による経口内視鏡を用いESD(Endoscopic Submucosal Dissection、内視鏡的粘膜下層剥離術)と、外科医による腹腔鏡下の胃局所切除を同時に行う新しい手術で、内科医と外科医が協力して行う手術をいいます。がん研有明病院の比企先生らによって開発され、2014年に保険収載された新しい術式で、近年多くの施設で行われるようになっています。

 LECSは、通常の腹腔鏡手術と同様に全身麻酔下にお腹に5mmから12mmの孔を数か所にあけてモニター画面でお腹の中を見ながら、長い手術器具をお腹の中に入れて行う手術です。それと同時に、消化器内科医により経口内視鏡を行い病変の存在部位を確認したうえでESD(内視鏡的粘膜下剥離術)により腫瘍周囲の胃壁の切除範囲を決定します。ついで外科医が切除範囲に従って腫瘍を含めて胃壁を局所的に切除した後に、胃を縫合閉鎖します。腫瘍は、お臍の傷を少し延長することで体外へ取り出します。手術時間は3時間程度で、入院期間は1週間程度です。(図1)

 LECSは上部消化管内視鏡と腹腔鏡手術を組み合わせ、機能温存を目指した胃切除を行う術式であり、最近では胃粘膜下腫瘍だけでなく早期胃癌に対しても適応が広がってきている有用な治療法です。患者さんにとっても非常にメリットのある治療法であり、当院では今後も安全性に注意しつつ適応していきます。