内視鏡外科部長の竹村と申します。
のどの違和感やつまり感を自覚されている方は実際にたくさんおられますが、内視鏡などの検査をしても異常な所見がないか、または軽い逆流性食道炎として診断され、原因がわからないことがよくあります。もちろん、食道癌や咽頭癌などがあるために、のどの違和感を訴えられる方もおられますが、大部分の方では通常の検査では異常がないとみなされます。
この一因としてのどの違和感を生じさせる原因が実はのどの部分にはなく、みぞおちのあたりにある食道と胃のつなぎ目(食道胃接合部)に原因があることが多いことによります。我々の食道は、のどの部分と食道と胃のつなぎ目の部分に、それぞれ括約筋と呼ばれる構造を有しています。(上部食道括約筋と下部食道括約筋)。上部食道括約筋は食道に入ったものが口に戻らないように、下部食道括約筋は胃に入ったものが食道に戻らないようにする関門のような役割を持っています。
しかし、この食道と胃のつなぎ目に機能的な異常を生じさせる疾患(食道裂孔ヘルニアや逆流性食道炎など)が生じると、胃から食道への食べ物や胃酸の逆流を防止する機能が低下します。このため食道内に戻った胃液を口にまで戻さないための防御反応として、のどの部分にある上部食道括約筋が強く収縮することにより、のどの違和感が生じていると考えられています。
よって、実際にのどの部分に異常がなくても、自覚症状としてのどの違和感を感じることになります。さらにこのような症状を有する方の多くは、胃液が食道内にとどまる時間が短く食道の炎症所見が軽度であるため、内視鏡で観察しても食道の炎症やびらんが極軽度であり、内視鏡検査で異常がないと診断されることが多々あります。このため、これらの症状を含めて非びらん性胃食道逆流症(NERD)と呼ばれており、最近では患者さんの数が増加しているとされています。ただし、のどの違和感を感じている方の全てがNERDで説明できるわけではなく、その他多彩な疾患が隠れている可能性があるため、十分な検査が必要です。
のどの違和感を生じさせる病気 |
● 逆流性食道炎 ● 食道裂孔ヘルニア ● 食道アカラシア ● 食道運動機能障害 ● 食道癌 ● 咽頭癌 など |
一方、食道裂孔ヘルニアにより、のどの違和感を訴えられる方も増加しており、胃液の刺激性を低下させる胃酸を抑制する薬でも症状が改善しない方や嘔吐を伴う方もおられます。このような方には、胃からの食物の排出を改善する薬剤を用いたりしますが、あまり効果は望めないことが多いようです。このため、外科的に食道と胃のつなぎ目を胃内容物が戻りにくい形に作り替える手術(噴門形成術)が適用されることが増えてきています。この手術は以前は開腹下に行われていましたが、最近では手術器具の発達により腹腔鏡下に行うことが標準になってきました。
当院でも、2017年より腹腔鏡下に行う噴門形成術を導入しており、食道疾患を専門にする食道科認定医が診療に携わることで安全に施行できております。のどの違和感がなかなか改善しない方は、当院外科を受診して頂ければ、診断・治療の一助になり得ると思います。