内視鏡外科部長の竹村と申します。
近年、世界中で肥満による健康障害が問題となっています。肥満に関した疾患としては、糖尿病・睡眠時無呼吸症候群・心筋梗塞・脳血管障害など様々なものがあり、これらにより平均余命が短縮することが知られています。
当然日本でも同様の傾向にあり、食事内容の欧米化により肥満の方は増加しています。さらに、日本人は内臓脂肪優位の肥満が多く、肥満度が低くても肥満関連疾患を起こしやすいといわれています。
肥満に対してはまず内科的治療が原則ですが、高度の肥満の方では長期にわたる体重コントロールが困難で、リバウンドしやすいことが問題点です。このような内科的治療に対して抵抗性の方が外科的治療の適応となります。日本ではまだ手術件数が少ないため、日本におけるデータは少ないですが、国外の報告では内科的治療に比べて十分な体重減少が得られ、その効果が持続するとされています。さらに、糖尿病を含む肥満関連疾患改善効果があることも報告されています。
減量手術の術式にも数種類ありますが、日本において保険で認められている術式はスリーブ状胃切除術で、当院ではこれを腹腔鏡で行う腹腔鏡スリーブ状胃切除術を行っています。
スリーブ状胃切除術とは、胃の大部分を切り取ってバナナくらいの太さにしてしまう手術で、胃を小さくすることで食事量を制限するとともに、食欲に関するホルモンの分泌を減らすことで食欲を低下させ、長期にわたり減量効果を得ることができる効果があります。しかし、全身麻酔による手術であり、当然手術によるデメリットもあります。手術後合併症としては、出血や縫合不全、肺塞栓症、逆流性食道炎などがあり、特に縫合不全は術後早期に発症した際には再手術が必要になります。また、当然ですが、一度切り取った胃は元には戻りません。さらに手術後長期間の食事指導や栄養管理が必要で、これを怠るとビタミンや微量元素の欠乏をきたすことがあります。
一方、本術式の適応としては、1.減量目的とする場合にはBMI(BMIとは、体格指数(Body mass index)と呼ばれ、体重(kg)÷ 身長(m)÷ 身長(m)で求められます。正常は20~25とされています(単位 kg/m2))は35以上、2.肥満関連疾患のうち糖尿病・睡眠時無呼吸症候群や脂質異常症などのうち2つを有する場合にはBMI32以上、かつ6ヶ月以上の内科的治療が行われている、とされています。
減量手術はあくまで減量のための一つの手段にしかすぎません。術後も長期にわたり食生活などの生活習慣に注意しないと、体重は元に戻ってしまう可能性もありますが、生活習慣を変えた方は糖尿病などの薬を飲む必要が無くなったり、生活の質が向上した方が多くおられます。
当院では減量手術は非常にメリットのある術後であると認識しており、今後安全性に十分注意しつつ施工していきたいと考えております。手術についてお話を聞いてみたいと思われる方は外科外来を受診して頂ければ、担当の外科医より手術について詳しく説明させていただきます。