サイト内検索

食道の運動機能を測定する検査について(食道内圧測定)

外科コラム

内視鏡外科部長の竹村と申します。

 突発的に起こる心屋部や胸の下の方の痛みは、心臓に関連していることが知られていますが、心電図やその他の心臓に関する検査を行っても異常がないと診断されることも比較的多く経験されます。

 このような胸の痛みは心臓に原因がないことから、非心臓性胸痛と呼ばれています。心臓に異常がない胸痛(非心臓性胸痛)に関連する疾患は肺疾患や肋間神経痛などもありますが、逆流性食道炎など食道に原因があることが比較的多いと言われています。しかし、そのような方では内視鏡検査をしても異常所見がないと診断されることが多々あります。この場合には食道の蠕動と呼ばれる食道の動きに異常が存在する場合があり、食道内圧検査と呼ばれる食道の動きを測定する検査が診断に有用であるとされています。さらに、喉の違和感や喉の詰まり感、原因不明の嘔吐など食道に起因すると思われる症状があっても、通常の内視鏡検査やレントゲン検査では異常がないと診断される方のなかにも、食道の運動(蠕動と呼ばれています)に異常がある方がおられることが知られています。
 

 この食道の蠕動と呼ばれる運動は、喉の部分から下に向かって順番に起こり、食道に入ってきた食物を胃内にまで運搬する役割をしています。その蠕動に異常があると食道内に食物が貯留したり、嘔吐が生じたり、強い収縮が起こることで胸痛を自覚することがあります。蠕動の測定は通常の内視鏡検査や食道の造影検査では難しく、食道運動機能検査(食道内圧測定)と呼ばれる特殊な検査機器が必要です。当院外科では2019年9月より食道運動機能を測定することが可能な(ハイレソルーションマノメトリ一法)検査機器を導入しました。

 ハイレソルーションマノメトリ一法は1cm間隔で36個の圧センサーが配置されている直径4mmの細いチューブを鼻から胃内にまで挿入することで、喉から食道と胃のつなぎ目にまで、全長にわたって食道の内圧変化を連続性にとらえ、可視化できるようにする検査法です。鼻に局所麻酔薬入りのゼリーを使って充分に麻酔を行ってからチューブをゆっくりと挿入しますが、少し不快感が生じることがあります。チューブを挿入し先端が胃内に入っているかを確認した後に一定の間隔て少量の水を飲んでいただきます。この検査によって食道の運動(蠕動)障害の有無を評価することが可能です。さらに、運動障害がどのような病気に相当するかを診断することも可能になつています。

食道内圧測定検査の特徴

  • 対象:非心臓性胸痛・喉の違和感・難治性逆流症・嚥下困難・ゲップが多いなど食道の異常を疑う方。
  • このような方々の診断は内視鏡検査や食道造影などの通常行われている検査法では異常がないと診断されることが多い。
  • 今回当院で導入したハイレソルーションマノメトリ一法は、食道運動機能を可視化して以上の有無を詳細に検出・診断できるようにした新しい検査方法であり、食道運動障害の診断には非常に有用である。
  • 1cm間隔で36個の圧センサーが配置されている直径4mmの細いチューブを鼻から胃内にまで挿入することで、咽頭部から食道全長にわたって食道の内圧変化を連続性にとらえ、可視化できるようにする検査法です。
  • 検査時間:約30分程度で終了します。

 食道内圧測定で診断される疾患は食道アカラシア、食道痙摯症、ジャックハンマー食道など頻度が低く特殊な疾患が主ですが、逆流性食道炎や食道裂孔ヘルニアの診断にも有用であるとされています。
本検査法はまだ導入している施設は少ないですが、非常に有用な検査法であり、これまで診断を確定することができなかった食道の異常に診断をつけることができ、治療方針を決定できることで症状改善のための一助になることが十分に期待でき、今後当院外科では積極的に行っていく予定です。