内視鏡外科部長の竹村と申します。
当院では2017年より、食道裂孔ヘルニアや逆流性食道炎に対する腹腔鏡下手術を積極的に行っており、手術件数も増加傾向にあります。その結果、昨年の日本全国の病院の手術件数の集計で南大阪病院の食道裂孔ヘルニア・逆流性食道炎の手術件数が日本1位になりました。
順位 | 所在地 | 施設名 | 実績(手術あり) |
1 | 大阪府 | 社会医療法人景岳会南大阪病院 | 58 |
2 | 東京都 | 東京慈恵医科大学付属病院 | 33 |
3 | 東京都 | 順天堂大学医学部付属順天堂医院 | 14 |
4 | 埼玉県 | 医療法人社団優慈会佐々木病院 | 13 |
5 | 千葉県 | 国立大学法人千葉大学医学部付属病院 | 12 |
5 | 兵庫県 | 姫路赤十字病院 | 12 |
5 | 千葉県 | 医療法人社団協友会柏厚生総合病院 | 12 |
5 | 大阪府 | 社会医療法人愛仁会千船病院 | 12 |
9 | 東京都 | 東京大学医学部付属病院 | 11 |
9 | 大阪府 | 大阪府立病院機構大阪母子医療センター | 11 |
10 | 福岡県 | 九州大学病院 | 10 |
10 | 茨城県 | 茨城県立こども病院 | 10 |
食道裂孔ヘルニアや逆流性食道炎は非常に頻度の高い内科疾患であり、胃酸を含んだ胃液が食道内に逆流することで、胸部不快感や心窩部(胸の下の方)の痛み、胸やけ、ゲップが多い、嘔吐、夜間不眠などの非常に多彩な症状が生じます。
特に近年ではご高齢の方の人口増加により、大きい食道裂孔ヘルニアを有する方が増え、さらに背中の曲がった(円背または亀背)方が増えることで、食道裂孔ヘルニアにより食後の嘔吐や誤嚥性肺炎を生じることも多くなっています。
これらの食道裂孔ヘルニアや逆流性食道炎の症状は、プロトンポンプ阻害剤などの胃酸分泌抑制効果の高い薬剤の内服により、逆流してくる胃酸の刺激性を低下させることで胸やけは改善する方が多いですが、逆流そのものは止めることができないため、嘔吐や胸部不快感などの症状が持続する方が多々おられます。この場合には内服を持続するか、持続する症状のまま生活することになります。しかし、当院で導入している食道裂孔ヘルニア・逆流性食道炎に対する腹腔鏡下手術は内服薬で改善しない持続する症状を改善できる可能性がある有効な手術です。
海外では逆流性食道炎の患者さんが多いため、この手術は非常に手術件数の多い術式です。その一方で、日本では有効な薬が安易に使えるため、胃酸分泌抑制剤持続して使うことが多く、嘔吐などの症状が持続したまま通院される方が多く手術件数が非常に少数でした。最近では増加傾向にありますが依然として手術件数は少なく、この術式を安定して安全に行える施設は非常に少数です。
我々は2010年より食道裂孔ヘルニア・逆流性食道炎に対する腹腔鏡手術を他院で多数経験し、2017年からは当院で同様の手術を行ってきました。この手術の治療成績について様々な学会や研究会で報告することで、日本全国から当院へ手術目的に来院されるようになりました。手術件数が他の施設より多くなることで、手術への習熟が進み手術時間が非常に短縮し、さらに手術が安全に行えるようになり、手術成績が安定しました。
大学病院やセンター病院では、がんの治療を専門とし、当院で行っているような食道良性疾患(食道裂孔ヘルニア・逆流性食道炎・食道気憩室・食道アカラシアを含む食道運動機能障害など)の件数は少数です。当院では食道良性疾患に対する手術を多数行う事で、内服薬を持続しても胸部不快感や胸の痛みなどの症状が持続したり、嘔吐や誤嚥性肺炎などで生活に支障が来たしている方に生活の質の向上が得られる安全な手術を行うことが可能となっています。
当院消化器外科では、食道の病気でお悩みの方に食道領域を専門とする医師が診療にあたっております。診察希望の方は下記の予約センターまでご連絡いただければ予約いただけます。