食道良性疾患の検査
南大阪病院外科では2023年より日本食道学会の認定する『食道外科専門医認定施設』として、良性・悪性を問わず様々な食道疾患に対して日々診療を行っています。特に食道良性疾患の代表は逆流性食道炎・食道裂孔ヘルニア・食道アカラシアなどで、特に逆流性食道炎・食道裂孔ヘルニアの頻度が高いことが知られています。この食道良性疾患にも、近年の検査機器の発達により多彩な病態や疾患を含むことが知られるようになっています。この食道良性疾患に対する検査は、大学病院やセンター施設では導入しているところも多いですが、当院では食道良性疾患の診療を希望される患者さんに対応するため、食道良性疾患に対する特殊な検査機器を導入しております。
1. 食道内圧測定検査
喉の違和感や喉の詰まり感、原因不明の嘔吐など食道に起因すると思われる症状があっても、通常の内視鏡検査やレントゲン検査では異常がないと診断される方が多くおられます。このような方の中に頻度は低いですが、食道の運動(蠕動と呼ばれています)に異常がある方がおられることが知られています。
この、食道の蠕動と呼ばれる運動は、食道だけでなく胃・小腸・大腸のなど全ての消化管に生じます。食道の蠕動は喉の部分から下に向かって順番に起こり、食道に入ってきた食物を胃内にまで運搬する役割をしています。その蠕動に異常があると食道内に食物が貯留したり、嘔吐が生じたり、強い収縮が起こることで胸痛を自覚することがあります。
この蠕動の測定は通常の内視鏡検査や食道の造影検査では難しく、食道運動機能検査(食道内圧測定)と呼ばれる特殊な検査機器が必要です。当院外科では2019年9月より食道運動機能を測定することが可能な(ハイレゾルーションマノメトリ一法)検査機器を導入しました。
ハイレゾルーションマノメトリ一法は1cm間隔で36個の圧センサーが配置されている直径4mmの細いチューブを鼻から胃内にまで挿入することで、喉から食道と胃のつなぎ目にまで、全長にわたって食道の内圧変化を連続性にとらえ、可視化できるようにする検査法です(図1)。
鼻に局所麻酔薬入りのゼリーを使って充分に麻酔を行ってからチューブをゆっくりと挿入しますが、少し不快感が生じることがあります。チューブを挿入し先端が胃内に入っているかを確認した後に一定の間隔て少量の水を飲んでいただき、食道の運動を測定します(図2)。
この検査によって食道の運動(蠕動)障害の有無を評価することが可能です。さらに、運動障害がどのような病気に相当するかを診断することも可能になっています。上部消化管内視鏡検査では、異常が無いと診断されているのに、様々な食道の症状が持続する方で、受診いただければ検査の説明をさせていただきます。
2. 24時間Phモニタリング・インピーダンス検査
逆流性食道炎を疑う方に、実際に胃から食道へ逆流が起こっているか、またその程度を評価するための検査です。さらに、逆流性食道炎の症状はあるのに、内視鏡では逆流性食道炎の所見が無く診断が困難な方や、胃酸を抑える薬を内服しているのに、逆流性食道炎の症状が改善しない方などに適応する検査です。食道内のインピーダンス(抵抗)の変化を測定することで、液体や気体(ガス)の逆流の測定が可能となると同時に、食道内の酸の程度を測定することにより、食道に逆流しているものが胃酸であるのか、胃酸ではなく何かほかのもの(例えば胆汁や膵液など)なのかを診断することができます。
まだ日本では全国的にも導入している施設は少なく、広く普及していない特殊な検査ですが、当施設では逆流性食道炎で手術を希望されて来院される方が増加しているため、手術適応の判断に重要と考えこの検査方法を導入しました。
実際には、直径2mmほどのチューブを鼻から挿入して24時間留置し胃食道逆流の有無を確認します。このため1泊の入院が必要になります(図3)。
これらの検査の詳細に関しましては、外科外来で説明させていただきますので、予約センターまたは地域医療推進室までご連絡頂ければと思います。